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 96年に初めてこの博物館に来た時は、髑髏(しゃれこうべ)を集めて形成されたカンボジアの国土地図が展示されていた。真ん中辺りにトンレサップ川を示すと思われる赤い線が入ったもので、この赤は血を現していたと思う。しかし現在、この地図は存在しない。不評だったという理由で撤去されたらしい。

 たぶんに倫理上のことだと思うが、この撤去に至る経緯について詳しいことは分からない。クレームがカンボジア人から出たものか、国外から出たものかが気にならないでもないが、むしろ僕が気になったのは、これが展示された経緯だった。
 なぜ髑髏で地図を造ったのか。カンボジア人の発想だったのか、あるいは国外の「助言者」がいたのか。作成段階での心理状態はどうだったのかといったことを、今回は書いて見たいと思う。もちろん空想ですよ。

 まずウィキを訪問して、博物館の概要を知ることを薦めます、知っている人は、そのままどうぞ。
ja.wikipedia.org/wiki/S21_(%E3%83%88%E3%82%A5%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B9%E3%83%AC%E3%83%B3)

img537.jpg
Tuol Sleng/Phnom Penh/Cambodia 2008



 この博物館を一言でいえば、クメールルージュが如何に酷いことをしたかという展示の連続といっていい。収容者が拷問されたとされる部屋や独房、そして夥しい数の犠牲者のポートレートが陳列されている。クメールルージュが行ったことは実際その通りだとだと思うし、事実関係に対して異議はないが、ちょっと別の角度から観てみる。
 
 博物館の主旨はポルポト派の悪行を伝えるとともに、反共プロパガンダという政治上の側面があると思う。これでもかと繰り返される展示を見せつけることによって、「共産主義者はこういうことをやりかねない」と思わせる狙いがあると感じた。
 このうちポルポト派の悪行については、カンボジア人の本音だと思う。そして後者の部分については、国外からの「助言」があったのではと推測している。

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Tuol Sleng/Phnom Penh/Cambodia 2008

 この博物館に関して「ポルポトの狂気」という言葉が氾濫しているので、博物館の狙いは概ね成功しているといっていい。僕に言わせれば「クメール人の狂気」であり、もっといえば「人間の狂気」なのだが、この件に限って言えばクメール人以外の関与はなさそうなので措く。どちらにしても、全責任をポルポトさん一人に負わせることに、見事に成功したと思う。
 よそ様の国のこととはいえ、釈然としませんね。

 多くの人が従ったんですよね。多くの人がポルポトさんに共鳴したんでしょ。 逆らえなかったから? この部分がさっぱり分からない。

f4964312.jpeg
Tuol Sleng/Phnom Penh/Cambodia 2008
 


 さて髑髏地図。一般にはカンボジア人のメンタル部分が指摘されている。作成者は奇妙なアーチスト精神に駆られたのではと推測しているが、もちろん事実は分からない。
 しかし僕がこれを見た時は、多少の違和感はあったものの、ほとんど何も感じなかった。それほど不謹慎とも思わなかったし、単純に陳列品のひとつとして眺めた記憶しかない。
 撤去された後に、言い訳がましくあれこれ言う論調があるが、「ウソつけ」だと思う。あくまで僕の狭い経験での話だが、96年の頃はこの髑髏地図に対して、倫理上の問題を指摘する人はいなかったように思う。 

 地図そのものは撤去されたものの、髑髏の展示は2008年の6月現在は健在だった。カンボジアでの死者の扱いの詳しいことは知らないが、未だに墓に入れられず、鑑賞できるようになっている。客寄せの素材として抜きがたい物があるのだろうか。

 この博物館の最大の受益者は、地元の人よりも外国からの観光客のような気がする。何しろ自国では見られないものがある。そして人それぞれに、異次元の思いに浸ることが出来る。
 博物館という施設そのものに教育的要素があるが、とりわけトゥールスレーンには底浅い情操教育という効果もあると思った。  
 
img550.jpg
Tuol Sleng/Phnom Penh/Cambodia 2008
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