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 日本での話しだが、以前ツアーでプーケットに行ったことがあるという人に出会い、「どこのビーチに泊まったんですか?」と訊いてみたところ、彼は答えることが出来なかった。一瞬うっとなったが、考えてみればツアーゆえに宿泊場所など自動的に決められるのだから、ビーチの名称など知らなくても何ら支障がないわけだ。
 
 僕の好きなブログの一つである前川健一さんのアジア雑語林の最新記事(2012年1月22日)に興味深いことが書かれてあった。四方田犬彦(よもた・いぬひこ)さんという人の著作を引用した部分で、四方田さんが赴任先のイスラエルからパリに行った時の記述が触れられている。
 
『四方田は、イスラエルからパリに飛んだ。アラブ映画祭で映画を見るためだ。
「パリといえば日本人は、花の都だとか、薫り高きフランス文化とか、そんな時代遅れのことばかり考えているようだが、ごくわずかな観光地の外に一歩でも出てみれば、そこには北アフリカの文化が広々と横たわっていることがわかる」。』(サイトより引用)
 
 そして最後に前川さんはこう締めくくる。
 
『「観光」というのは、現実を見ないことだ。絵葉書やカレンダーに登場してくる景色を再確認するのが観光だ。だから、雑誌やテレビの旅番組には、アフリカ人のパリもインド人のロンドンも出てこない。中国人の露天商が並んでいるマドリッドも姿を見せない。日本人にとって、ヨーロッパはいつまでたっても白人だけの世界なのだ。
 こういう風潮を助長しているのが、世界遺産ブームである。』(サイトより引用)
 
 もちろん前川さんの真意は分からないが、観光は現実を見ないというのは、「展示物には興味を示すが、その国のありようには関心を示さない」といった意味だろうと解釈した。確かに団体旅行の方々を見ていると、そんな気がしなくもない。そして世界遺産ブームが助長しているというのは、テレビや雑誌の海外モノが専ら世界遺産の視覚的要素で占められ、人の暮らしぶりや、その国が抱える問題などの描写が大幅に縮小されているといった意味だろうと思った。これも事実だろうとは思う。
 
 それでは観光で現実を見ることは出来ないだろうか。ちょうど世界遺産という言葉が出てきたので、少なからず僕が訪れた世界遺産での体験を通して考えてみた。



 その頃は世界遺産ではなかったが、1989年に初めて訪れた麗江古城でトンパ文字を見た記憶はない。ことによるとあったかもしれないが、商店などの看板の表記は、すべからく漢字だった。ところが最近になってテレビで知ったが、麗江のオールドタウンにはトンパ文字が溢れている。「なるほど。名所旧跡というのは、こうやってでっち上げるのか・・・」などと中国人の知恵に感心したが、(リニューアルされた)その地を訪れた人の多くが、トンパ文字が長く実用されてきたと思うだろう。
 
 2005年に武陵源(ウーリンエン)に行った時に土家族(トゥチャ・ぞく)の駕籠の申し出を断ったところ、「日本鬼子!」と背中から浴びせられた。これによって少数民族にも反日感情が及んでいることを初めて知った。根拠はないが中国人の反日感情は漢族特有のものだと思っていたので、これはかなり意外だった(もちろん漢族も含めて一部の人ですよ)。
 
 2007年に訪れたラオス南部の仏教史跡ワットプーは、世界遺産の基準を考える上で格好の素材だった。何しろしょぼい。修復が全く追いついていない。おまけに本堂に向かって右側の空き地は、ペットボトルや菓子袋が溢れるゴミの山だった。これはひょっとしたら、貧国に対する心優しい西洋人の思いやりの結果ではないかと思ったほどだ(ジンバブエのグレートジンバブエにも似た印象がある)。



 観光というものを百パーセント展示物だけを視界に入れる行為と定義するなら、確かに観光は現実を見ないとは思う。しかし現実の観光行為は、それほど厳格なものではない。アンコールワットに辿り着くには、物売りとの葛藤は避けられない。そして囲まれた人達の多くは、児童労働や貧困といった現実に思いがゆく。むしろ見ても意味が分からんレリーフより、こちらの方が強く印象に残ったりする。
 
 団体か個人かといった旅行形態が影響することはなくはないが、観光で見ることが出来る現実はたくさんありますね。結局のところ訪れた個人の感性の範囲だと思う。

今回参照した前川健一さんの記事です/http://d.hatena.ne.jp/maekawa_kenichi/20120122/1327199388
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