忍者ブログ
[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6]  [7]  [8]  [9
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

 もう随分と昔の話で小学校の三年か四年の頃だが、僕のクラスの一部の生徒の間で、シャーロック・ホームズがブームになったことがあった。で、本を競って買い揃え読んだのだが、その時に印象に残ったのが、「アンダマン」という語だった。確か「恐怖の4(四つの署名)」という作品に出てくる言葉で、吹き矢を操る南洋出身の小人を指していたと記憶している。そして欄外の注釈で、実際にアンダマンという場所は存在し、件の小人はその島の出身ということが書かれてあったと思う。現在インド領になっているアンダマン諸島のことである。

 大人になって東南アジアを旅するようになって、アンダマン諸島そのものには行かなかったが、アンダマン海には行ってみた。早い話がタイのプーケットで、透き通った海水の美しさに感激した記憶がある。その頃持参したポケット版の英和辞書には、「andaman 土人。未開の人」という記述がされていた。既に小学校以来アンダマンの意味は土人と思っていたので全く驚かなかったが、多少は常識がついていた僕には、土地の名前に使うなんて白人も酷いことするなあと思った。
 かって10何世紀だかに島に辿り着いた英国人。島の住民の風貌を見て、付けた名前がアンダマン諸島(土人の島)。ついでに周りの海もアンダマン海(土人の海)と、勝手に想像を膨らませていたわけだ。

 さらに想像は続いた。かってはバンコクとパタヤかアユタヤに絞られていたタイ行きのパックツアーも、プーケットまで足を伸ばすようになった。「アンダマン海に浮かぶ真珠の島 プーケット」などといった旅行会社のパンフレットを目にする度に、「オイオイ土人の海じゃ不味いだろ」と、旅行会社の奴らはアホじゃないかと思い、ハラハラワクワクしながら見守った。ひょっとしたらプーケットが欧米人に人気がある理由の一つには、「土人海」という響きがあるのではと思ったほどだった。が、しかし・・・


 この項を書くに当たって、改めて調べてみた。三十年を越える年月に渡って信じて疑わなかったことが誤解だったかどうかは分からないが、その結果は驚くべきものだった。

「アンダマン (Andaman) という名前は、マレー語でヒンドゥー教のハヌマーン神を意味するHandumanに由来する」(ウィキペディア。アンダマン・ニコバル諸島より)

 何だこれは。マレー語? ハヌマーン神? アンダマンは土人じゃなかったの?
 じゃあホームズの本に書かれてあった注釈は嘘だったの? アンダマンが島の名前と同時に、原始人たる小人そのものを指してたじゃない(僕は覚えてるぞ)。 さらに大人になって手にした英和辞書(確か講談社)の記述は? 確かにアンダマン諸島そのものの記述ではなかったにしても、アンダマンが土人と明確に書いてたじゃない。 全ては記憶違いか?

 まずはオンライン辞書を探ってみたが、なぜか「andaman」は該当なし。時たま出てくるのも、「ベンガル湾に浮かぶ・・・」といった地名だけだった。仕方がないので図書館に行って、「Oxford」など分厚い辞書を片っ端から探ってみたが、なぜか載っていない。差別語だから削除されたのだろうか。しかし問題のある語でも、広辞苑なみに厚い辞書には載っていると思うが、さっぱり分からない。「andaman」は何処に行った?

 整理してみる。

一 まずウィキペディアの記述は正しい。よって英和辞書は措くが、少なくともホームズ本の注釈は誤り。

二 まずホームズ本も英和辞書の記述も正しい。よってウィキペディアの記述は誤り。

三 両方正しい。つまり、「andaman=土人。未開の人」という解釈と、現実のアンダマン諸島は別物である。ただ辞書の方はいいが、この場合はホームズ本の注釈が引っかかる。

四 ハヌマーン神を意味するHandumanの響きがandamanに似ていたので、それを聞いた英国人が嘲笑も含めてそう呼ぶようになった。

五 実は由来は土人だが、流石に現在の尺度には合わないので、たまたま「発見」したハヌマーン神の名を借り、そういうことにした。

六 やっぱり全ては僕の記憶違い。

 どれですかね。あるいはどれでもない? 六だとこの話はなかったことになってしまうが、個人的には四か、穿った見方だが五のような気もする。詳しい方は御教示を。

PR
プロフィール
HN:
lovelylifeorhell
性別:
男性
趣味:
旅と酒と読書
自己紹介:
ここのところ私事多忙にて更新が滞っています。
忘れたわけではありませんので、まったりとお待ちください。
ブログ内検索
アクセス解析
忍者アナライズ
忍者ブログ [PR]