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 思えば一ヶ月ほど前に、後藤修身(ごとう・おさみ)さんという方のサイトに出会ったのが、このシリーズの始まりだった。これまで気にも留めなかったミャンマーという語の由来に興味を惹かれ、次いで呼称の問題を扱ったサイトをいくつか見たが、後藤さんのサイト以外に特別学んだことは一つもなかった。何より主張の内容があまりにも似通っているからで、また正直言って、自分で考え抜いた結果とも思えなかった。おそらく似たり寄ったりの文献を参照し、そこに書かれている論が無意識のうちに自分の意見になった結果だろう。この問題に限らず、何処かで聴いた話が持論として語られることは珍しくない。

 とはいえこの問題でいうと、ミャンマーと呼ばない理由について、軍事政権の決定と切り離して論じたものがなくがっかりした。例えば日本の対外呼称はJapanだが、まともにJapanと呼んでいるのは英語圏くらいで、各国各地域はそれぞれ固有の言語で呼んでいる。そのセンから攻めれば、オランダ語からの借用語といわれるビルマそのものはおかしな名称ではないので、「たとえ彼の国の対外呼称がどうであれ、引き続きビルマと呼ぶことに問題はない」といった論が成立するが、なぜか見当たらなかった。

 よほど軍政で脳味噌が満杯になり、他の思考が入り込む余地がなかったのだろうか。外国地名の日本語表記に関する議論が活性する機会にもなったと思うが、もったいない話だ。

 個人的には好ましく思っているが、ひとつ不思議なのは、(日本の)政府やメディアがあっさりミャンマーに変更したことだ。このうち公人たる政府については何となく理解出来るが、私人に過ぎない新聞やテレビが律儀に追随したのは、何か思惑でもあったのだろうか。あるいは馴染みの横並びか。

 とまあ書いているうちに新しいネタが生まれてくるが、もうキリがないので、最後に英語表記のBurmaを取り上げ、このシリーズは終わりにする。

 変えなさい。は冗談として、実は国名について、国連やオリンピックなどで使われている表記と、英米などで普通に使われている英語の表記が完全に一致するのかは知らない。たぶん色々な見方があるのだろうが、仮に一致するとしたら、何らかの国名変更があり国連が承認した場合、英語表記が英語圏の意思とは関係なく変わることになる。

 こういう場面を想像してみる。ロンドンの茶の間でテレビのオリンピック中継を見ているロンドンっ子。実況が英語なら、字幕も英語である。ところがある場面に差し掛かると、見慣れない綴り字が現れた。Myanmar? 何だこれは。実況と字幕が違うやないか(意味わかります? つまり実況はBurmaなのに、選手の国籍など字幕はMyanmarだったことに混乱した。日本人はスポーツの国際映像などで慣れているが、英語が当たり前の英語圏の人は、英語の実況と英語であるはずの字幕のズレなど考えられない。そういうシーンがあればの話だが)。

 実はこの、「勝手に自国語を弄られる不快感」が、英語圏とりわけ英国がミャンマーの呼称変更にゴネた一番の理由ではないかと思っている。軍政だの国民合意だの取って付けたような海の向こうの論を真に受けた、「ミャンマー忌み嫌い派」は改めて救いようがないが、話を英語に戻す。

 我慢しなさい。は冗談として、これは国際語の宿命なので、やっぱり我慢しなさい。これを乗り越えるには、我々が使用している英語と、国際語としての英語は別物であるという認識を持つしかない。とはいえ世界を席巻した言語の母国としては、腸が煮えくり返る思いだろう。宗主国が半世紀ちかく経って、かっての飼い犬に噛まれたわけだ。やるじゃないかミャンマー。

 世界には国際語と呼ばれている言語がいくつかあるが、英語が世界最強であることは間違いない。今時フランス語が国際語と捉える人は、当のフランスにも露ほどもいないだろう。ましてや国際社会ではクソの役にも立たないポルトガル語が公用語になった東チモールの子供達が不憫でならないが、これはまた別の話。

 幸せかどうかはともかく、英語のネイティブスピーカーとして生まれることは、あらゆる分野に於いて有利なのは間違いないが、喉に支えた魚の骨のような苛立つ盲点があったわけだ。地球に対する征服感を満喫できる国際語も、よいところばかりではないということか。日本語が地球の方言でよかった。おしまい。
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